上腕骨近位端骨折のリハビリテーション!保存療法の予後は?骨折の分類や禁忌を解説

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上腕骨近位端骨折とは

高齢者の転倒で多い骨折のひとつであると言われている上腕骨近位端骨折ですが、その概要については知らない人も多いのではないでしょうか。

名前の通り、上腕骨近位部の骨折を表し、場合によっては手術が必要な怪我です。

まずは、上腕骨の解剖から復習していきましょう。

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上腕骨の解剖

上腕骨とは、肩甲骨や鎖骨と関節をなし、二の腕にあたる部分の骨を指します。

今回は上腕骨近位端骨折がテーマなので、近位部の覚えておいてほしい名称だけ記載します。

  • 解剖頸
  • 外科頸
  • 大結節
  • 小結節
  • 上腕骨頭

これらは後に説明する分類において必要な知識なので、各部名称と部位は知っておきましょう。

上腕骨近位端骨折の発生機序

上腕骨近位端骨折で最も多い発生機序としては、転倒などによる急激な外力が加わった場合です。

高齢者は転倒率が高くなるため、転倒後は骨折がないか確認することがとても大切になります。

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上腕骨近位端骨折の分類

上腕骨近位端骨折を、その程度によって分類することで、重症度を客観的に他者へ伝えることが可能です。

ここでは、AO分類とNeer分類について紹介します。

AO分類

1984年にJakobらより提唱された分類であり、骨頭の血流状態や壊死の可能性の着目したものとなっています。

大別するとA、B、C群に分けられ、さらに3つ(例:A-1、A-2・・・)に分類されます。

A型:関節外の単純骨折

B型:関節外の重複(2箇所)骨折

C型:関節内骨折

AO分類は近年も使われていますが、私が勤務する病院ではあまり使われていません。

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Neer分類

Neer分類とは、4つの骨片転位の組み合わせで分類されたものです。

  • 上腕骨頭
  • 大結節
  • 小結節
  • 骨幹

全部で16通りであり、骨片が多いほど重症に分類されます。

上腕骨近位端骨折の症状

仮に骨折に至ってしまった場合、どのような症状が出現するのでしょうか。

これを知っておくと早期発見、医療機関の受診や適切な治療につながるため覚えておきましょう。

疼痛(痛み)

骨折の最も多い主訴としては疼痛(痛み)になります。

実際には骨膜に神経が張り巡らされているため、開放骨折などの骨膜に刺激が加わると疼痛として自覚します。

後述しますが、転位のない軽度のひびだけの場合は、受傷時にはそこまで疼痛を伴わないことがあり、徐々に痛みを自覚することがあるので注意しましょう。

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炎症

急性期における外傷に対する生理的反応として有名なのが炎症です。

炎症には、以下の4兆候を認め、適切な管理・対処が必要になります。

  • 腫脹
  • 熱感
  • 発赤
  • 疼痛

なかでも疼痛を訴える人が多いので炎症所見としては気付きやすいのですが、腫れや熱感などの身体所見も見逃さないようにしましょう。

炎症の対処としてはRICEが一般的であり、スポーツ界でも使われています。

Rest(安静)

Ice(冷却)

Compression(圧迫)

Elevation(挙上)

各頭文字をとってRICE と呼ばれています。

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ADL障害

疼痛などにより骨折をした腕は不使用になるため、更衣(着替え)や入浴、その他の家事動作が制限されます。

場合によってはご家族の支援が必要な場合もあり、医療従事者より介助指導を受けておくと安心です。

転位

骨折後の管理不足で体重をかけてしまったり、筋肉の牽引作用によって骨片が骨折部よりずれてしまうことです。

基本的に骨癒合は骨同士が接触しておくことで修復(リモデリング)されていくため、転位が悪化してしまうと手術が必要になります。

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上腕骨近位端骨折の治療

上腕骨近位端骨折の治療は大きく分けて2つに分類されます。

1つずつ説明していきますね。

保存療法

保存療法とは手術をせずに自然治癒で回復を待つ方法です。

腕が垂れ下がっていると牽引力が発生してしまうため、三角巾などを使用して骨折部の負担を軽減させる必要があります。

拘縮予防や除痛目的にリハビリテーションを併用することが多いです。

手術療法

骨折の分類や患者背景にもよりますが、保存療法による治療が適応でない人は手術による治療が選択されます。

主な手術法は以下に示します。

  • 髄内釘固定
  • プレート固定
  • 人工肩関節

今回は保存療法がテーマなので、手術療法の詳細は別の記事で紹介させて頂きます。

基本的にはリハビリを受けることになり、セラピストは各術式の理解と、主治医の指示を把握しておかなければなりません。

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上腕骨近位骨折の禁忌

保存療法や術後早期は患部が不安定であり、転位の危険性が十分に考えられるため、負担をかけることは禁忌としています。

  • 肘を着いて起きる
  • 荷物を持つ
  • 腕を使う

体重をかけるような外力や、使用による筋収縮の牽引作用は禁忌です。

また、炎症による熱感がある場合には、入浴やホットパックなどの温熱療法も禁忌となります。

上腕骨近位端骨折の画像評価

画像評価は基本的に以下の2つになります。

  • 単純X線(レントゲン)撮影
  • CT画像

受傷や手術直後は頻回に画像評価で経過を追いますが、骨癒合が得られてきたタイミングで少しずつその間隔を空けていきます。

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上腕骨近位端骨折のリハビリテーション

今回は上腕骨近位端骨折の保存療法を紹介していきます。

時期によってプログラムを変更していく必要があるため、病期に分けて解説していきます。

安静期

受傷から数週間は安静が第一選択です。

特に炎症は発症から3日がピークであると言われており、まずは炎症管理や疼痛コントロールに努めます。

医師によっては下記に示す、筋収縮が起こらない振り子運動を処方します。

  • コッドマン(Codman)体操
  • 石黒法

どちらも骨折側上肢を下垂させ、重心移動による振り子様の運動を行うことで可動域維持を目的とします。

高齢だと指示が入りにくい場合があるので、ある程度適応かどうかはセラピストも判断しましょう。

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仮骨形成期

約4週間で仮骨形成、癒合の時期となるため、セラピストによる他動運動が開始されます。

可動域訓練の開始時期は主治医の考え方によって多少前後すると思いますので、主治医の指示に従いましょう。

早期可動域開始:転位のリスク

晩期可動域開始:拘縮のリスク

可動域訓練の開始時期によってその後のリスクは異なってきますので、念頭に置いて介入しましょう。

運動療法(機能回復)期

骨癒合が得られ、廃用した筋力増強訓練を併用します。

この時期は介入するべき項目が多く、優先度をつけることや自主トレの指導も徹底しましょう。

  • 筋力訓練
  • 残存する可動域制限の除去
  • 協調性運動

可動域制限が残っている場合には、まずは可動域制限の除去が優先されます。

機能予後をふまえてゴールレベルを患者と共有してリハビリに取り組んでいきましょう。

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リハビリテーションの効果

上腕骨近位端骨折の保存療法を選択された患者に対するリハビリテーション効果です。

Neer分類のpartごとに可動域(屈曲、外旋、内旋)を比較した文献の報告になります。

○ 屈曲

1-part  :142.5°

2-part  :107°

3-4part :117°

○ 外旋

1-part  :51

2-part  :44

3-4part :43

○ 内旋

1-part  :5.1

2-part  :4.3

3-4part :4.2

*内旋は肩関節JOAスコアを参照(下図)

参考文献:当真孝 上腕骨近位端骨折に対する保存治療の成績-多施設研究-

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リハビリテーションの勉強方法

上腕骨近位端骨折の患者を担当するセラピストを対象におすすめの専門書をいくつか紹介します。

肩関節に苦手意識を持つセラピストは多いので、ぜひ参考にしてみてください。

機能解剖学的触診技術 上肢

肩関節の治療において、まずは触診技術が絶対条件となります。

エコーを用いた解剖学の基礎知識や、カラーイラストによる触診手順が記載しており、非常に臨床に役立つ著書となっております。

整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹

整形外科運動療法とありますが、保存療法に対するアプローチ方法も記載してあります。

事例ごとに運動学・解剖学に基づいた臨床推論を解説してあるので、上肢や体幹のアプローチで悩んでいるセラピストは参考になる著書です。

臨床実践 肩関節の理学療法

機能解剖学や運動学などの基礎的な内容から、肩に関連した疾患を網羅した1冊になっています。

肩関節は複雑な構造をしており、病態別の介入方法を知っておかなければなりません。

肩の患者に関わるスタッフは参考になる著書です。

肩関節 理学療法マネジメント

ベストセラーの理学療法マネジメントシリーズです。

肩関節の解剖学・運動学を序盤で述べ、症状や疾患ごとのケーススタディを通して理解が深められる1冊となっております。

臨床経験ではなく、客観的なデータを忠実に記載してあるため、臨床推論能力を鍛えることも可能な著書です。

まとめ

上腕骨近位端骨折の保存療法のリハビリテーションについて解説しました。

保存療法は炎症の管理や転位を防ぐことを第一優先とし、時期に合わせた介入を心がける必要があります。

肩関節を苦手とするセラピストは非常に多いため、これを機にしっかりと学習しましょう。

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