心不全療養指導士の筆記試験の対策に困っている方も多いと思いますが、認定試験ガイドブックは活字が多くて大変だといった声をよく聞きます。
そこで、各章ごとにまとめていくことにしました。
今回は第一回「心不戦の概念」について解説していきます。
最後には私が作成した予想問題もありますので、ぜひ活用してみてください。
基本的には、以下の「心不全療養指導士 認定試験ガイドブック」を参考にしていますが、試験を受けられない方でも勉強になる良書ですので、ぜひお手元に置いておくと良いでしょう。
何かわからないことがあればコメントを頂ければ対応します。
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心不全の定義
心不全と聞くと、心臓の病気といったことは誰でも想像がつくでしょう。
ガイドラインでは以下のように定義されています。
○ガイドラインとしての定義
何らかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が 出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群
○一般向けの定義
心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気
ここで重要なことは、一般向けには分かりやすく「病気」と表記されていますが、ガイドラインとしては「心不全は臨床症候群である」ということは覚えておきましょう。
そして、どちらの定義にも共通している3つの特徴は以下の通りです。
- 何らかの心臓機能障害があり、それを補うべく働く
- 前負荷、後負荷、心収縮力などの心ポンプ機能の代償機転が破綻し、循環不全が生じ、症状や徴候が出現
- 運動耐容能の低下をきたし、進行性で死亡につながる症候群
キーワードは、
だいたいこの辺りでしょうか。
心不全は心臓機能障害によって代償機転が破綻した結果、心不全徴候の出現とともに運動耐容能が低下する臨床症候群だということを覚えておきましょう。
心不全診療・診断におけるポイント
労作性の息切れを感じるといった患者が来院されたとき、「心不全徴候を認める」といった理由だけで心不全と診断することはできません。
なぜなら、息切れは肺疾患でも認める所見であり、症状だけでは鑑別ができないからです。
分かりやすく言えば、検査結果などから総合的に判断する必要があるということです。
○ 心臓機能障害をみるための検査例
- 超音波検査(LVEF)、弁膜症の有無
- BNP、NT-proBNP
- レントゲン画像
決して、単独の評価のみで短絡的に心不全の有無を判断しないようにしましょう。
そのためには、心不全診療・評価においておおまかに3つの評価が必要になります。
- 原因となっている心疾患自体の評価
- どこがどれくらい破綻しているか、重症度を含めた病態の評価
- 代償破綻を引き起こした誘引の評価
特に、誘因の評価では、「患者由来の要因」と「医学的な要因」があります。
これらの代償破綻に繋がる誘因を理解することで、心不全の発症や増悪を予防できる可能性があります。
心不全の分類
心不全は単一の疾患ではなく多様性を示す臨床症候群ということは、ここまで読み進めて頂いた皆様なら理解できたと思います。
心不全はさまざまな要因で起こり得るため、何に着目するかによって多様に分類することができます。
- LVEFによる分類
- Forrester分類
- 心不全進展ステージ
- NYHA心機能分類(別章で解説)
- Nohria-Stevenson分類(別章で解説)
心不全進展ステージは病期であり、分類と並列してよいのかは悩みますが、重要なことは各分類を確認するだけで、心不全の病態をおおまかに把握することができるという点です。
今回はLVEF、Forrester分類、心不全進展ステージについて解説していきます。
LVEFによる分類
ガイドラインでは、超音波検査(心エコー)で左室の収縮機能指標のひとつである左室駆出率(LVEF)を用いて心不全を分類しています(上図参考)。
LVEFの程度によって、心不全の病態を「収縮不全/拡張不全」と判断することができます。
基本的に薬剤によって生命予後の改善効果が示されているのではHFrEF患者です。
HFpEF患者は拡張障害が主体であり、通常例と比較して前負荷(容量負荷)で容易に左房圧、肺動脈偰入圧が上昇します(下図参考)。
HFrEFで有効性が示されている薬物療法の多くは、HFpEF患者においては有効性が示されていないため、診療ガイドラインにおける推奨される治療も異なります。
選択問題でHFrEF患者とHFpEF患者を入れ替えて出題することも考えられますね。
Forrester分類
血行動態指標である心係数(CI)と肺動脈偰入圧によって4群に分類されるものです(上図参照)。
もともとは急性心筋梗塞における急性心不全の予後を予測する目的で作成されたものですが、心不全の病態評価につながり、心不全重症度の判定に反映するためよく用いられます。
- 心係数(CI):臓器灌流の程度を評価
- 肺動脈偰入圧:うっ血の評価
心係数の低下(2.2L/分/m2以下)、肺動脈偰入圧上昇(18mmHg以上)のⅣ群が最も重症です。
Forrester分類は侵襲的な評価ですが、非侵襲的評価としてNohria-Stevenson分類でも簡易的に評価することが可能です。
Nohria-Stevenson分類はこちらでも解説しています。
ここで問題を出すのであれば、組み合わせではないでしょうか。
数字を覚えれば表に当てはめるだけなので、組み合わせの問題も解けますね。
心不全進展ステージ
ガイドラインやコンセンサスステートメントで、心不全は4つのステージ(病期)に分けられています(上図参照)。
心不全を発症していない段階はA、Bであり、一度でも心不全を発症した場合はステージC、Dとなります。
各ステージの分類の組み合わせは出題される可能性が高いです。
下図に各ステージの特徴をまとめます。
ポイントは、おおよそ3つです。
- 器質的心疾患の有無(A or B)
- 心不全の有無(AB or CD)
- NYHA心機能分類Ⅲ度より改善(C or D)
各ステージで療養指導内容が異なるので、療養指導も含めてしっかりと覚えておきましょう。
予想問題
今回は予想問題を5問用意しました。
解説もあるので、ぜひ参考にして頂けると幸いです。
問1
心不全の定義に関する問題です。
心不全の定義はガイドラインのものと、一般向けに分けられていますが、共通点は「心臓機能障害/進行性/代償機転の破綻/運動耐容能の低下」などでした。
また、息切れなどは肺疾患患者でも認めるため、心不全徴候に加えて心臓機能障害を総合的評価で捉えることが重要です。
よって、「1・3・4」は正解です。
ガイドラインによる心不全の定義は「臨床症候群」であるため、2は誤りですね。
問2
心不全の診断・評価で必要な評価を問う問題です。
心不全とは、心臓機能障害によって代償機転破綻の結果、心不全徴候を認める臨床症候群と解説しました。
心不全を引き起こす原因はさまざまであり、心疾患自体の精査や、代償破綻を引き起こした誘因については評価が必要になります。
また、過去の検査結果があれば、来院時のデータと比較して病態の程度を確認することができます。
よって、この問題では選択肢すべてが正解となります。
問3
左室駆出率(LVEF)による分類の組み合わせを問う問題です。
HFpEFは、EF50%以上で拡張機能障害が主体の病態となります。
HFrEFは、EF40%未満で収縮機能障害が主体の病態です。
HFmrEFは、40%≦LVEF<50%の境界型心不全、HFrecEFはLVEFの明確な定義はなく、治療経過でHFpEFに移行した患者を指します。
よって選択肢4のEF 45%以上といった表現は間違いになるので注意してください。
答えは「3」です。
問4
Forrester分類の組み合わせを問う問題です。
心係数2.2以下は臓器灌流低下、肺動脈偰入圧18以上は肺うっ血を表し、その組み合わせで分類します。
正解は「3」です。
問5
心不全ステージの説明の組み合わせを問う問題です。
ポイントは3つありました。
- 器質的心疾患の有無(A or B)
- 心不全の有無(AB or CD)
- NYHA心機能分類Ⅲ度より改善(C or D)
1は器質的心疾患(リモデリング)を認めるのでステージBです。
2は一度心不全を発症しているのでステージCであり、この状態は心不全の寛解期になります。
3はステージCです。
ステージDは「NYHA心機能分類がⅢ度より改善しない患者」であり、問題文は「NYHA心機能分類Ⅱ度」となっているので誤りになります。
よって、答えは3です。
まとめ
今回は心不全療養指導士試験対策として、「心不全の概念」について解説しました。
心不全の定義や診断のポイント、分類について学べたのではないでしょうか。
予想問題は今回の記事を中心に出題しているので、間違えた方は何回も読み直してみてください。
今回は以下の著書を参考にしています。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
他にもコメディカルに役立つ情報を配信しています。
下のリンクを参考にしてみてください。
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