日本理学療法士協会より、会員を対象にさまざまな学習機会を提供するべく生涯学習制度が運用されてきました。
2022年4月より新生涯学習制度にリニューアルされるため、旧制度と新制度の違いを含めて解説していきます。
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生涯学習制度とは
生涯学習制度は、日本理学療法士協会より提供される会員を対象とした制度です。
その目的は、以下のようになります。
・理学療法士の資質向上
・専門分野における職能的水準の引き上げ
・自発的な学習継続の促進
理学療法士は年々と増加傾向ではありますが、卒後教育が問題であると言われてきました。
生涯学習制度は、そんな理学療法士界をより良くするために運用されていますが、詳しい内容については把握していない方も多いです。
新生涯制度の説明に移る前に、旧制度の流れを説明していきます。
旧生涯学習制度
理学療法士という職業ができてから50年が経ちますが、セラピストが自己学習し、専門性を高めるためにさまざまな取り組みがなされてきました。
まずは生涯学習履修の流れですが、次のようになっています。
- 日本理学療法士協会入会
- 新人教育プログラム履修
- 修了申請、専門分野登録
- 認定/専門理学療法士
ひとつずつ説明していきます。
新人教育プログラム
入会後は最短1年で指定された単位を取得します。
修了条件となる単位は、以下の通りです。
A:必須初期研修(5/5単位)
B:理学療法の基礎(3/4単位)
C:理学療法の臨床(4/7単位)
D:理学療法の専門性(2/4単位)
E:理学療法における人材の育成(1/3単位)
*C 症例発表は3単位分
新人教育プログラムの単位を全て取得できたら、修了申請をすることで新人教育プログラム修了証が発行されます。
新人教育プログラムを修了しましたら、専門分野へ登録して認定・専門理学療法士制度へ移行することが旧制度の流れでした。
それでは、新年度から始まる新生涯学習制度とはどんなものなのでしょうか。
新生涯学習制度とは
理学療法士の仕事ができて50年が経ち、社会の変化や多様化するニーズに応えることができる理学療法士を育成するためにリニューアルすることになりました。
旧制度との大きな違いは、以下のようになります。
・前期研修、後期研修の履修(登録理学療法士制度)
・登録理学療法士を5年毎に更新
旧制度の新人教育プログラムが、前期・後期研修といった形に置き換わりました。
ひとつずつ説明していきます。
登録理学療法士制度
卒後5年間義務教育的な位置付けとし、前期・後期研修の履修により幅広い分野に対応できるジェネラリストの育成を目的としています。
前期・後期研修の履修後は登録理学療法士として、5年毎に更新時研修を受けなければなりません。
前期研修
前期研修は、座学22コマ、実地研修32コマの取得(最短履修期間2年)が必須です。
概要は以下に示す通りとなります。
A:初期研修(6コマ)
B:理学療法の基礎(6コマ)
C:理学療法の専門性(10コマ)
D:実地研修(32コマ)
後期研修
後期研修は、座学51コマ、実地経験3年の取得(最短履修期間3年)が必須です。
概要は以下に示す通りとなります。
A:臨床推論(4コマ)
B:臨床疫学(4コマ)
C:領域別研修 座学(19コマ)
D:関連領域(5コマ)
E:領域別研修 事例(6コマ)
E:領域別研修 育成(5コマ)
F:最新の知見(8コマ)
認定・専門理学療法士制度
登録理学療法士の次のステップとして、より専門性を高めたい理学療法士のために認定・専門理学療法士制度が設けられています。
この制度は、より専門性の高い知識や臨床技術を有するスペシャリストとして、個性の育成プログラムとも言えます。
認定・専門理学療法士の役割として、日本理学療法士学会は以下のように説明しています。
・臨床実践家モデル
・新規性を見逃さない
・学問を実践に結びつける
・ジェネラルと専門性の細分化進化の同時進行
・病院内から地域、社会の中で活動を指向
引用:日本理学療法士学会
それぞれの概要を説明していきます。
認定理学療法士
まず、認定理学療法士の申請要件になります。
・指定研修カリキュラムの受講(12コマ)
・臨床指定カリキュラムの受講(必須15コマ、選択5コマ)
・日本理学療法学術研修大会の参加(みなし8コマ)
上記条件を満たして申請し、認定試験に合格することで日本理学療法士協会認定理学療法士認定証が発行されます。
取得までの流れを図示したものになります。
その認定分野は旧制度の領域は既存分野として継続(基礎領域のみ専門理学療法士へ移行)し、新規新設および統廃合は順次検討していくとされています。
2022年3月時点では21領域です。
専門理学療法士
まず、専門理学療法士の申請要件になります。
・指定研修カリキュラムの受講(12コマ)
・ブロック学会参加(みなし8コマ)
・都道府県学会参加(みなし4コマ)
・学術大会の発表(日本理学療法学会連合の会員団体が主催)(みなし5コマ)
・点数基準に該当する査読付き原著論文1編(みなし30コマ)
上記条件を満たして申請し、口頭試問に合格することで日本理学療法士協会専門理学療法士認定証が発行されます。
取得までの流れを図示したものになります。
2022年3月時点では13分野が公表されており、新規分野を順次設計・開始を検討していくとしています。
認定・専門理学療法士制度の更新
5年毎に更新が必要ですが、認定・専門理学療法士更新に関わる履修点数基準を満たしている必要があります。
自己研鑽の継続、最新の知見の追求が求められるため、一度取得して安心しないようにしましょう。
認定・専門理学療法士のメリット
登録理学療法士のみならず、専門・認定理学療法士の取得にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ひとつずつ説明していきます。
キャリアアップ
有資格者は職場から重宝されることが多く、昇進などのキャリアアップが見込めます。
他スタッフも触発されて認定・専門理学療法士を目指したり、自己研鑽に積極的になるなど影響力を与える存在になることも。
他職種との連携も密になり、組織的改革に貢献できる場合もあるので、現職場で昇進していきたい人は目指すことは大きなメリットになるでしょう。
収入が増える
職場によっては手当てがつくなどして給与アップが見込めます。
また、パーソナルトレーナーやスポーツ分野などは有資格者である方が仕事は受けやすくなります。
他にも、勉強会の講師として声が掛かることで講師代などの副収入が得られる場合もあります。
人脈が広がる
論文掲載や学術発表などで、同じ業界から認知される機会が増えます。
認定・専門理学療法士の領域はさまざまであり、横のつながりが増えることでお互いの得意分野を共有することができます。
また、共同でイベントを開催するときなどに招待してもらうなど、セラピストとしての幅を拡大することに繋がる可能性があります。
資格の勉強方法
資格を取得したいと思っても、なかなか勉強が捗らないといった人も多いと思います。
勉強方法に悩んでいる方はこちらの記事もご参照ください。
他にも、私が参考にした著書も紹介しておきますね。
まとめ
理学療法士の新生涯学習制度について、旧制度の違いも交えて解説しました。
私自身も卒後教育の面は問題視しており、今後の理学療法士の資質向上を踏まえた更新制度は理に適っていると判断しています。
今後は有資格者が重宝されていく可能性もあるので、自身のスキルアップも含めて検討してみてはいかがでしょうか。
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