近年は心不全パンデミックが話題となっており、心疾患患者は増加傾向になります。
その中でも心房細動を有する患者は多く、再入院だけでなく脳卒中病変に発展することも。
今回は、臨床でよく見かける心房細動について、文献を交えて紹介していきます。
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心房細動とは
高齢者で多くみられ、最も多く診療する不整脈疾患のひとつになります。
心房細動を有すると、以下のようにさまざまな症状に発展する危険性があります。
- 心内血栓による心源性脳塞栓症
- 頻脈や心機能低下による心不全
日本では超高齢者社会を迎えており、心房細動患者は増加の傾向を辿っています。
年齢別の有病率は以下の通りです。
- 50歳代:0.5%
- 60歳代:1.8%
- 70歳代:4.8%
- 80歳代:8.8%
80歳代では約10人に1人が心房細動を有する高い結果となっています。
心疾患の既往歴がない患者でも心房細動を有している可能性があることを覚えておいてくださいね。
心房細動の治療
高齢者増加に伴い、心房細動の治療が重要視されてきています。
心房細動の治療はおおよそ4つです。
- 抗凝固療法
- 心拍数コントロール
- リズムコントロール
- カテーテルアブレーション
非弁膜症性心房細動患者の追跡研究における心血管死では、心不全が14.5%、脳卒中が6.5%といった報告があります。
つまり、塞栓症予防による抗凝固療法だけでなく、心不全の予防や治療を中心とした包括的アプローチも重要です。
抗凝固療法
塞栓症予防には従来ワルファリンが主流でしたが、直接経口抗凝固薬(DOAC)が心房細動に対して使われるようになっています。
日本では、日本循環器学会が提唱する不整脈薬物治療ガイドラインにおいて、CHARDS2スコアが血栓塞栓症リスク評価に用いられています。
最大6点であり、点数によってリスクの程度を分類しています。
- 低リスク:0点
- 中等度リスク:1点
- 高リスク:2点以上
非弁膜症性心房細動患者では、1 点以上であればDOACによる抗凝固療法が推奨されます。
ところで抗凝固療法ですが、出血リスクも考慮する必要があり、慢性腎不全患者や重症出血の既往を持つ患者には慎重にならなければいけません。
心拍数コントロール
心房細動出現時の心拍数をコントロールする治療として第一に介入し、症状が残存する場合に後述する抗不整脈薬を使用したリズムコントロール治療をします。
心拍数コントロールに使用する薬剤は以下の通りです。
- β遮断薬
- 非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬
- ジギタリス
- アミオダロン
β遮断薬は心保護作用や予後改善効果が期待されるため、心拍数コントロールの第一選択薬として用いられます。
心機能が保たれている(HFpEF)患者では非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬を使用でき、反対に難渋する心機能低下(HFrEF)患者ではジギタリスを併用します。
画像は頻脈性心房細動に対する心拍数コントロールのアルゴリズムです。
心房細動の目標心拍数は安静時110bpmとしていますが、厳格な管理が必要な患者もいるため、個々の患者において判断が必要になります。
リズムコントロール
リズムコントロールは大きく2つに分類されます。
- 薬物療法(抗不整脈薬)
- 非薬物療法(電気的除細動、カテーテルアブレーション)
ひとつずつ解説していきます。
抗不整脈薬
従来は同調律維持が重要とされていたため、抗不整脈薬によるリズムコントロールが主流でした。
しかし、心拍数コントロールと生命予後に差がないと2002年に報告があり、簡便な治療であるリズムコントロールが主流とされるようになりました。
カテーテルアブレーション
心房細動は発症から徐々に発作性から持続性心房細動へ移行し、同調律維持が困難になるので早期介入が重要です。
75歳以上の高齢者に対するカテーテルアブレーションは薬物療法よりも優れ、有効性と安全性が示されています。
新機能にかかわらず心不全を合併した心房細動患者には積極的におこなわれますが、80歳以上では合併症が多いので適応に注意しましょう。
まとめ
心房細動患者は年々と増加傾向であるため、その治療法が重要視されています。
従来はリズムコントロールが主流でしたが、現在は心拍数コントロールが第一選択となるケースが多いです。
適応症例に対してカテーテルアブレーションは有効性かつ安全性が保証されているので、積極的に介入されてきています。
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参考文献
文献:心不全の病態と治療の進歩
著者:国立病院機構仙台医療センター 循環器内科 山口展寛
掲載先:仙台医療センター医学雑誌 Vol. 11, 2021
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