心電図の判読が苦手と言った人は多いですが、それは各波形における意味を理解していないからです。
まずは刺激伝導系のについて知っておきましょう。
今回は心臓の電気的刺激の伝導について解説していきます。
この記事を読んでわかること
- 刺激伝導系の概要
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刺激伝導系とは
私たちの心臓は収縮と弛緩を繰り返していますが、これは洞結節から発生する電気的興奮が心房や心室に伝わることで起こり、このことを刺激伝導系と呼びます。
刺激伝導系の経路は以下の通りです。
- 洞結節(心臓のスイッチ)で電気的興奮が発生
- 電気刺激は心房内を流れて房室結節へ
- ヒス束へ移行し、心室で右脚/左脚と2本に分岐
- 最終的にプルキンエ繊維に伝わり、心室筋を収縮させて拍動が生じます
このように、洞結節とは律動的な信号を作るペースメーカーの役割を果たしていますが、この電気的興奮が不十分となった場合にはペースメーカーを埋め込む手術が必要になります。
収縮弛緩メカニズム
心臓は収縮と弛緩を繰り返すことで拍動し、全身に血液を送っています。
その収縮弛緩のメカニズムは苦手意識を感じている人も多いのではないでしょうか。
基本的には、以下の用語は抑えておきたいです。
- 静止膜電位
- 分極
- 不応期
それでは、ひとつずつ解説していきます。
静止膜電位
心筋の細胞膜には、イオンの通り道であるイオンチャネルが存在し、これらの働きによって生じる細胞内外の電位差を静止膜電位といいます。
そして、この静止膜電位が生じている状態を後述する分極と呼び、さらに2つに分けられます。
- 脱分極
- 再分極
両者の違いを説明していきます。
脱分極
心筋細胞は電気刺激を受けることでNa+チャネルが開口し、Na+が流入して細胞内の電位がプラスに転じることを脱分極といいます。
その後、Ca2+チャネルが開口してCa2+が流入することで活動電位が維持されます。
再分極
Ca2+チャネルが閉口し、K+チャネルが開口してK+が細胞外へ流出することで細胞内は再びマイナスに転じることを再分極といいます。
後述する不応期では活動電位が発生しないため、リセットするためにこの再分極が必要です。
不応期
電気刺激により活動電位が発生する、新しい刺激には反応しない時期があり、これを不応期といいます。
不応期はさらに2つに分けられます。
- 絶対不応期
- 相対不応期
両者について解説していきます。
絶対不応期
どんなに強い電気刺激にも活動電位が発生しない時期を絶対不応期といいます。
相対不応期
再分極の間にさらに強い電気刺激を与えると活動電位が発生する時期を相対的不応期といいます。
刺激伝導系で覚えておきたい略語
さきほどは刺激伝導系全体の流れを解説しましたが、各部名称だけでなく覚えておくべき用語や略語について解説します。
上室
例えば上室性期外収縮といった不整脈などに使われる「上室」とはどの部分を指すのでしょうか。
- 洞結節
- 心房
- 房室結節
- ヒス束
これらを総称して表記するため、上室が使われる名称は上記のどこかに生じる異常になります。
そして、上室を表す英語はSupraventricularです。
例えば発作性上室性頻拍PSVTの略語はParoxysmal Supraventricular Tachycardiaになります。
上室と心房は同義ではないので注意してください。
心房
心房を表す英語はAtrium/Atrialです。
例えば心房細動Afの略語はAtrial Fibrillationであり、頭文字をとって表記されています。
心房細動について勉強したい方はこちらから
心室
心室を表す英語はVentricle/Ventricularです。
例えば心室性期外収縮PVCの略語はPremature Venticular Contractionになります。
まとめ
心電図波形を勉強するうえで基礎的な部分である刺激伝導系について解説しました。
刺激伝導経路や分極異常により不整脈は誘発されるため、必要な知識だと感じます。
また、略語は覚えておくと医師のカルテも読みやすくなるので業務効率が向上するでしょう。
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