SPPBはフレイル患者に用いる下肢機能評価として幅広く用いられています。
その評価項目は患者の機能レベルを分類するだけにとどまらず、予後予測の一助として活用するといった報告もみられます。
今回は、有用性の高いSPPBについて解説していきますね。
この記事を読んでわかること
- SPPBの概要
- リハビリテーションの活用方法
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SPPBとは
Short Physical Performance Batteryの略語であり、高齢者における身体や下肢機能を評価するスクリーニングテストです。
SPPBにおけるメリットは以下の通りです。
- 客観的指標になる
- 特別な物品を必要としない
- 点数別に重症度判定
SPPBはフレイル状態かそのリスクがあると予想される高齢者の下肢機能の評価が可能であり、ADLや生命予後に用いられることもあります。
下記に示すように、点数別に重症度を判定することができます。
- 0~3点 :きわめて低運動機能
- 3~6点 :低運動機能
- 7~9点 :中等度の運動機能
- 10~12点:運動機能良好
引用:日本循環器学会 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン
それでは、SPPBの各評価項目について解説していきます。
SPPBの評価項目
SPPBは大きく分けて以下の3つに分けられます。
- バランステスト
- 歩行テスト
- 椅子立ち上がりテスト
各評価項目は4点ずつの配点となっており、合計12点満点となります。
それでは、各項目について詳細を解説しきます。
バランステスト
バランステストでは立位で実施し、以下の3つの順番で進めていきます。
- 閉脚立位:両足をつけた状態で10秒保持
- セミタンデム立位:片方の踵ともう片方の親指をつけた状態で10秒保持
- タンデム立位:片方の踵ともう片方のつま先をつけた状態で10秒保持
閉脚立位、セミタンデム立位は10秒可能で1点、10秒未満や実施困難で0点となります。
上記2つがクリアできればタンデム立位に移りますが、その配点は以下の通りです。
- 2点:10秒以上
- 1点:3秒~9.99秒
- 0点:3秒未満
- 0点:実施困難
その他のバランステストの注意点は以下の通りです。
- 閉脚、セミタンデム立位で0点だった場合は次の歩行テストへ(タンデム立位は未実施)
- 歩行補助道具は使用しない
- 手でバランスを取る、膝を曲げる等は可能
バランステストの概要は下の図を参考にしてください。
歩行テスト
普通のスピード(快適歩行)で4mの歩行を2回実施します。
歩行テストの配点は4点満点であり、その配分は以下の通りです。
- 4点:4.82秒未満
- 3点:4.82秒~6.20秒
- 2点:6.21秒~8.70秒
- 1点:8.70秒以上
- 0点:実施困難
また、歩行テストにおける注意点になります。
- 被験者はスタートラインに足を揃える
- 合図と共に歩き始めたら時間を測定
- 片足がゴールを超えたら測定終了
- ゴールでは立ち止まらずにラインをこえてもらう
- 歩行補助道具の使用は可能
訓練室やベッドサイドの床にテープなどで目印を設置しておくと良いでしょう。
椅子立ち上がりテスト
胸の前で腕を組み、声掛けを合図になるべく素早く5回の起立着座を繰り返すテストです。
椅子立ち上がりテストの配点は以下の通りとなります。
- 4点:11.19秒以下
- 3点:11.20秒~13.69秒
- 2点:13.70秒~16.69秒
- 1点:16.70秒以上
- 0点:60秒以上、実施困難
椅子の高さは明記されていませんが、40cmで実施している報告をいくつか見かけるので筆者は40cmで統一しています。
SPPBのカットオフ値と予後予測
SPPBのカットオフ値は疾患によって多少異なりますが、基本的には8-9点となります。
SPPBカットオフ値における報告をいくつか記載します。
- SPPB8点以下が欧州ワーキンググループによるサルコペニア診断基準の項目のひとつに採用されている。
- 心臓手術前のSPPB9点以下で手術後の歩行再獲得が遅延
- 異なる背景の高齢者対象のメタ解析では、10点未満が全死亡の予測因子として優れていた
引用:日本循環器学会 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン
他にも急性期高齢心不全患者の自宅退院困難例にSPPBを項目として報告している文献もあります。
急性期の高齢心不全患者の自宅退院予測困難例は、リハビリ開始時のSPPB≦3点、膝伸展筋力≦12.1kg、退院時のBI≦80点、独居、在院日数≦34daysであった。
横田純一郎:高齢者心不全患者の自宅退院の予測因子についての検討
SPPBは立位や歩行などの日常生活に必要な下肢能力を反映していることから、自宅退院では高い点数が求められます。
SPPB評価における注意点
SPPBは特別な物品が不要であることや、客観的指標のアウトカムとして有用ですが注意点もあります。
- 3つの異なる測定でやや頻雑になる
- 全ての身体能力を把握することはできない
- 検査による転倒リスク
あくまで評価の一環として捉え、患者把握は包括的に取り組む必要があることを忘れないようにしましょう。
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参考文献
横田純一郎:高齢者心不全患者の自宅退院の予測因子についての検討
日本循環器学会 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン
まとめ
今回は心不全フレイル患者で使用されるSPPBについて解説しました。
高齢者の下肢機能を客観的に評価できることから有用性が高く、予後予測に用いることも可能です。
しかし、全ての身体能力を把握できるものではないので、包括的に患者評価をする必要があります。
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