心不全の病態を分類する評価はさまざまですが、Nohria-Stevenson分類による評価を臨床で取り入れているでしょうか。
簡便な評価ですが、適切な方法でなければ意味がありません。
今回は、心不全患者に用いるNohria-Stevenson分類について解説していきます。
この記事を読んでわかること
- Nohria-Stevenson分類の概要
- Nohria-Stevenson分類の正しい評価方法
- Nohria-Stevenson分類による治療指針
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Nohria-Stevenson分類とは
心不全の病態を分類する評価のひとつであり、Nohriaによって2003年に提唱されたものです。
大別するとうっ血所見と低灌流所見を身体所見から把握し、4つの組み合わせから心不全の病態を分類します。
うっ血所見はdry/wet、低灌流所見はwarm/coldで表現され、その組み合わせを下記に示します。
- Profile A:dry & warm(うっ血なし/低灌流なし)
- Profile B:wet & warm(うっ血あり/低灌流なし)
- Profile C:wet & cold (うっ血あり/低灌流あり)
- Profile L:dry & cold(うっ血なし/低灌流あり)
Profileを4分類したところ、短期間の死亡例は心臓移植を含めてProfileBとCに多いと報告されています。
ちなみにProfile Lは「Low output」や「LOS(低心拍出量症候群)」だと言われていますが明記はされていないようです。
Profile Cが最重症ですが、Dと表記してしまうとアルファベット順のイメージが定着してしまう恐れがあるので上記のような表現にしたのかもしれませんね。
Nohria-Stevenson分類の特徴は、非侵襲的であることや特別な器具を使用しないことから臨床においては有用ですが、評価には熟練を要します。
それでは、Nohria-Stevenson分類の評価方法について解説していきますね。
Nohria-Stevenson分類の評価方法
Nohria-Stevenson分類はうっ血所見と低灌流所見で心不全の病態を把握すると説明しました。
それでは、それぞれの評価内容を挙げていきます。
○ うっ血所見
- 起座呼吸
- 頸静脈怒張
- 浮腫
- 腹水
- 肝頸静脈逆流の陽性
ここで聞き慣れない2つの用語について解説します。
ヘッドアップ45度位で頸静脈怒張が確認できなかったとしても、肝頸静脈逆流を確認してみると頸静脈怒張が出現するケースがあります。
続いて、低灌流所見です。
○ 低灌流所見
- 小さい脈圧
- 四肢冷感
- 低Na血症(<135mEq/L)
- 腎機能悪化
低拍出量を認めると代償として尿量の減少・体液循環量が増加するため、低Na血症を認めることがあります。
また、脈圧や心拍出量低下は末梢血液循環量を軽減させるため、四肢の冷感といった所見も出現します。
急性心不全におけるNohria-Stevenson分類の位置付け
上の図はガイドラインで提唱されている、急性心不全に対する初期評価から急性期対応のフローチャートになります。
急性心不全の初期対応の目的は以下の通りです。
- 患者の救命と生命徴候の安定化
- 結構動態の改善と酸素化の維持
- 呼吸困難などのうっ血症状/徴候の改善
- 急性心不全の診断と急性冠症候群や肺血栓塞栓症の除外
- 心臓のみならず多臓器障害の進展予防
- 早期介入/早期改善によるICU/CCU滞在期間の短縮
Nohria-Stevenson分類の位置付けとしては身体所見による血行動態的分類であり、再評価の段階で用いられ、経時的に評価していくことが重要です。
Nohria-Stevenson分類による評価が不十分な場合は、スワン・ガンツカテーテルによる血行動態評価は行うべきですが、ルーチン導入は推奨されていません。
まずはしっかりと評価できるようにしましょう。
Nohria-Stevenson分類と治療方針
上の図は急性心不全におけるNohria-Stevenson分類による治療指針となります。
うっ血がなく末梢循環が維持されていれば基本的には内服薬の調整で済みます。
うっ血所見を認める場合は利尿薬による水引きを実施しますが、血圧上昇型の場合は血管拡張薬による後負荷の軽減に努めます。
血圧が低下する場合には強心薬を使用し、脱水などの体液量が減少している患者では輸液による治療が必要です。
Profile別の治療について、ガイドラインを参考に表にまとめたので下の図を参考にしてください。
Nohria-Stevenson分類による病態把握をし、現行治療と並行してリハビリテーションを行うことがガイドラインでは推奨されています。
例えば、血管拡張薬による後負荷軽減を図る段階でレジスタンストレーニングは不適切になるので、医師の治療方針は把握しておきましょう。
看護・リハビリに生かす
Nohria-Stevensonは経時的に評価することが必要であり、臨床や日常生活動作の前後でも効果判定として用いることができます。
例えば心臓リハビリテーション後に末梢冷感が増強(Profile A → L)した場合は、その運動強度では心不全が代償できていないと判断できます。
ADL動作や運動療法後にNohria-StevensonがProfile Aでない場合は、医師に相談してみることも重要です。
特にProfile B or Cの心不全患者では、心不全症状の有無を注意深く観察しましょう。
まとめ
心不全の血行動態的分類として使用されるNohria-Stevenson分類について解説しました。
簡便に心不全の病態を分類できるツールであり、病態に沿った治療方針の理解が重要です。
運動負荷やADL動作前後の経時的変化も確認できるため、心不全が代償できていない場合は負荷量の調整や医師に相談してみましょう。
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