心不全患者で膝や母趾の付け根に強い痛みを訴える人が一定数見られ、離床が遷延する場合もあります。
医師に痛み止めを依頼しても、なかなか積極的に使用を推奨してくれないと感じることはありませんでしたか。
私も若手時代であり医師に疑問を抱いていましたが、そこには理由がありました。
今回は心不全患者と鎮痛薬について解説していきます。
この記事を読んでわかること
- NSAIDsの効果、適応、禁忌
- 重症心不全患者にNSAIDsが禁忌となる理由
- 心不全患者の疼痛コントロール
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心不全患者が訴える痛み
急性期病院に勤務していると、一定数の心不全患者で疼痛の訴えにより離床が遷延する患者を経験します。
- 不動化による筋膜性
- 虚血性のよる胸部痛
- 痛風
もともと腰痛がある人は、ベッド臥床による疼痛を訴える患者がいます。
胸部症状の出現はすぐに医師を呼びましょう。
3つ目に心不全と関係がなさそうですが、痛風を発症する患者は意外と多いです。
心不全と痛風についての記事はこちらから

強い疼痛にはもちろん疼痛コントロールとして鎮痛薬の処方を依頼しますが、心不全患者においてNSAIDsの使用は気をつける必要があります。
そもそもNSAIDsとはなんでしょうか、次の項目で解説してきます。
NSAIDsとは
NSAIDs(エヌセイズ)は非ステロイド性抗炎症薬の総称であり、以下の作用を持ちます。
- 抗炎症作用
- 解熱作用
- 鎮痛作用
NSAIDsの英語表記は以下の通りです。
病院で処方されるNSAIDsの一例ですが、以下を参考にしてください。
- セレコキシブ
- ロキソプロフェン
- ジクロフェナク
- イブプロフェン
おそらくロキソニンなどは聞いたことがあるでしょう。
NSAIDsの副作用
NSAIDsの副作用は慢性疼痛治療ガイドラインで以下のように報告されています。
- 消化管障害
- 腎機能障害
- 浮腫(肝機能障害)
- 心血管系イベント
- 喘息
どの薬剤でも副作用は必ず存在するため、知識として知いても良いでしょう。
特に腎機能障害悪化リスクを意識して頭を悩ましている医師も多いです。
NSAIDsの禁忌
薬剤の副作用が患者の病態を悪化させるリスクを認める場合は基本的に禁忌となります。
NSAIDsの禁忌となる疾患や症状は以下の通りです。
- 消化性潰瘍がある患者
- 重度の腎機能障害
- アスピリン患者
- 重度心不全
基本的に薬剤の調整は医師や薬剤師の判断に委ねますが、その理由を知っておくことで他職種とのコミュニケーションエラーを防ぐことはできるでしょう。
今回は心不全がテーマなので、重度心不全患者にNSAIDsが禁忌となる理由を解説していきます。
重症心不全にNSIADsが禁忌となる理由
NSAIDsはプロスタグランジンの産生を抑制し、腎臓でのナトリウム再吸収を亢進させて心不全を悪化させます。
また、腎障害を引き起こしたり、抗血小板薬、抗凝固薬との併用で出血リスクを増加させることも要因になります。
比較的心不全がコントロールされてきている時期では症状に合わせて処方されることもありますが、超急性期の不安定期は基本的に禁忌だということを理解しておきましょう。
ここまでの記事を読んでいると、次のように勘違いしてしまうかもしれません。
しかし、決してそういうわけではありません。
例えばNSAIDs以外の鎮痛薬を使用することができます。
有名なものではアセトアミノフェン(カロナール)などでしょうか。
まずは可能な範囲で疼痛コントロールがされているか確認することは必要です。
医師に相談することは間違いではない
結論を言うと医師に相談することは必要であり、そのメリットは以下の通りです。
- 医師が患者状況を把握できる
- 可能な範囲で疼痛コントロールが開始される
- 他職種間における信頼関係の構築
医師は非常の多くの患者を抱えており、患者状況を把握しきれていない可能性があります。
また、医師に気を遣って相談できない患者もいますので、そこは関わりが多い看護師やセラピストが報告することも必要です。
また、こちらからコミュニケーションをとることで信頼関係が構築され、次回から相談が容易になることも。
コミュニケーションについて自信がない方はこちらの記事を参考にどうぞ

医療現場はチーム医療なので、わからないことは積極的に他職種に相談するようにしましょう。
思わぬ恩恵が得られることもあるので、損することはありません。
まとめ
今回は心不全における鎮痛薬について解説しました。
薬剤には副作用が存在するため、何も知らずに提案をするのでは他職種を困らせてしまうこともあります。
この記事では、心不全患者の疼痛では内服薬の注意点があるということを知っていただければ良いです。
提案ではなく相談できる間柄になれば、有効な信頼関係の構築に繋がることもあるので意識してみてください。
セラピスト関連の記事はこちらからどうぞ

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