植込み型除細動器(ICD)の機能や適応について解説

循環器

あなたは、担当している患者で「ICD」といった用語が記載されているのを見かけたことがありませんか。

ペースメーカなどのデバイスを使用している患者を担当しても、意外と理解している人は少ないような印象です。

今回は、植込み型除細動器(ICD)について解説していきます。

この記事を読んでわかること

  • ICDの機能や適応
  • 直通電流
  • 抗頻拍ペーシング

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植込み型除細動器とは

植込み型除細動器(以下:ICD)は心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈による突然死を予防する機器であり、体内に植え込みます。

その歴史は1980年に始まり1985年には臨床使用が認可され、現在では心房、心室リードを用いたペーシングや頻拍の鑑別が可能な第5世代が使用されています。

ICDが使用される患者の一例です。

  • 心停止より蘇生
  • 致死性不整脈の既往がある
  • 心不全症状がある低心機能

ICDの使用患者は増加傾向であり、総死亡や突然死抑制効果が示されています。

ICDの機能

致死性不整脈の治療デバイスであり、それぞれの症状に対して対応します。

  • 心室細動:直通電流(defibrillation)
  • 心室頻拍:抗頻拍ペーシング(ATP)、直通電流(cardioversion)

ICDは心拍をモニタリングしており、頻拍の出現を検知して治療が必要な不整脈かどうかの認識は基本的に心拍数によって決定されます。

実際には心内の波形から心室頻拍か心室細動かを判別できないので、心拍数(頻拍周期)で分類しています。

  • 心室細動ゾーン:心拍数200/分程度以上
  • 心室頻拍ゾーン:心拍数160/分程度以上

ICDの機能は基本的に致死性不整脈、いわゆる頻脈性不整脈をターゲットとしています。

しかし、ショック治療後の徐脈やβ遮断薬併用による徐脈に対応するため、ペーシング機能も搭載されており、ペースメーカの役割も担います。

直通電流

いわゆるショック療法であり、直通電流の両者の違いは、R波を同期するかどうかという点になります。

  • defibrillation:R波同期が困難
  • cardioversion:R波に同期

R波に同期させる意義としては、心室興奮時に通電することで心室細動の誘発を避けるためになります。

抗頻拍ペーシング(ATP)

基本的にはペーシングによる停止を試みるものになり、おおよそ2種類に分けられます。

  • バーストペーシング(burst pacing)
  • ランプペーシング(ramp pacing)

バーストペーシングは一定の間隔で刺激を連続して加えるものに対し、ランプペーシングは刺激の間隔を徐々に短くします。

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ICDの適応

基本的には致死性不整脈を認める患者が適応となり、その判断基準には左室駆出率(LVEF)に依存していますが、黄金律はありません。

器質的心疾患を持つ患者を適応とし、二次予防と一次予防に分けられます。

突然死二次予防

過去に心肺停止、持続性心室頻拍、心室細動の記録が残されている者に対する適応を指します。

各項目について解説していきます。

冠動脈疾患にともなう持続性心室頻拍、心室細動

この項目でいう冠動脈疾患とは急性期以外を指し、特にLVEF≦35%の患者においてより高い効果が期待できるといった報告があります。

急性冠症候群に出現する頻脈性不整脈は、虚血の解除や不整脈基質の安定化のよって再発性は低いので、必ずしもICDが適応になるわけではありません。

しかし、以下の可逆的要因で急性期以降に持続性心室頻拍/心室細動が誘発される可能性があり、ICDの適応は検討されるべきです。

  • 心機能の程度
  • 残存虚血の有無
  • 電解質異常

冠動脈疾患に対するICDの推奨されるエビデンス(推奨クラスⅠ)は以下の通りです。

日本循環器学会 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

非虚血性心筋症にともなう持続性心室頻拍、心室細動

2004年のメタ解析ではICDにより31%の死亡率改善を認めたものの、症例数が少ないことによる影響もありますが有意差は認めませんでした。

しかし、ICDは非虚血性心筋症の二次予防に有効であると結論づけて良いとされています。

非虚血性心筋症に対するICDの推奨されるエビデンス(推奨クラスⅠ)は以下の通りです。

日本循環器学会 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

突然死一次予防

非持続性心室頻拍(NSVT)のみを有するもの、心電図記録がない失神を有するもの、あるいはこれらがなくても突然死、不整脈死のリスクが高いものに対する適応を指します。

冠動脈疾患患者に対する一次予防

冠動脈疾患の急性期は致死的不整脈から救命されても、再梗塞やポンプ失調などの問題や、逆リモデリングから心機能が改善することも予想されます。

心筋梗塞後に一次予防としてICDの適応を検討する場合は、少なくとも発症40日以上生存した患者に対して判断されるべきです。

冠動脈疾患に対するICD一次予防適応のエビデンス(推奨クラスⅠ)は以下の通りです。

日本循環器学会 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

非虚血性心筋症患者に対する一次予防

日本人の心不全患者の7割が非虚血性心不全であり、総死亡は3年で20~30%と報告されています。

また、LVEF<30%の心不全患者では3年で15%に心臓突然死を認めていることから、ICDの適応は考慮してよいでしょう。

さらにNSVTの存在は、心室頻拍/心室細動の発症リスクを上昇させることが報告されています。

非虚血性心筋症患者に対するICD一次予防適応のエビデンス(推奨クラスⅠ)は以下の通りです。

日本循環器学会 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

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まとめ

致死性不整脈の治療デバイスであるICDについて解説しました。

ショック療法のイメージを持っている人は多いと思いますが、その機能や適応について知っている人は案外少ない印象です。

ICD使用患者は死亡リスクが高い傾向にあるので、認識を改めてリスク管理下で介入するようにしましょう。

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