レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(以下:RAA)系について知っていますか?
学生時代に学びましたが、理解が不十分だという人も多いのではないでしょうか。
RAA系は心不全の薬物療法において必要な知識になりますので、この機会に勉強しておいてください。
この記事を読んでわかること
- RAA系の概要、機序
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RAA系とは
RAA系はRAASと表記される場合もありますが、その働きは水分、電解質バランスや血圧の調整機構です。
そもそも腎臓の糸球体では血液をろ過するために一定の血圧が保たれていますが、血圧低下により機能不全を引き起こします。
それを防ぐために傍糸球体細胞からレニンと呼ばれる酵素が分泌されて血圧が維持されますが、その機序はいったいどんなものなのでしょうか。
RAA系の機序
最初にRAA系の機序について記載します。
- レニンは肝臓から放出されるアンジオテンシノーゲンを切断し、アンジオテンシンⅠを生成
- アンジオテンシンⅠは肺の血管内皮細胞で産生されるACE変換酵素によってアンジオテンシンⅡに変換
- 血管収縮やNa +の再吸収、アルドステロンの分泌により血圧を上昇
このアンジオテンシンⅡは、以下に示すアンジオテンシンⅠ型受容体が分布する場所に働きかけをして体に変化をもたらします。
その中でRRA系として血圧・電解質バランスの調整に関与するのは以下の3つになります。
- 血管平滑筋
- 腎臓
- 副腎皮質
それぞれの関与について解説していきます。
血管平滑筋
血管平滑筋に作用して収縮を起こすことで血圧を上昇させます。
腎臓
腎臓に関しては以下の作用を示します。
- 輸出細動脈の収縮
- 近位尿細管からのNa+再吸収
- 尿細管糸球体フィードバック反応の増強
Na+再吸収により水分も再吸収されますが、合わせて心不全による長期臥床が続くと心室内に血液が充満します。
心筋の伸展により抗RAA系作用を持つ脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が増加します。
BNPは心不全の診断マーカーとして用いられます。
副腎皮質
アルドステロンの分泌を促進します。
遠位尿細管から集合管におけるNa+再吸収、K+排出を促し、体液過剰によって血圧を上昇させます。
RAA系がもたらす効果
RAA系がもたらす効果は先述しましたが、もう一度まとめておきます。
- 血管平滑筋の収縮による血圧上昇
- 電解質のインアウトバランス調整による血圧上昇(アルドステロン)
RAA系は一見メリットが多いようですが、この代償機転が続くと以下の作用を示します。
- 線維芽細胞増殖による心肥大
- アルドステロンの酸化ストレスによる心筋の線維化
アンジオテンシンⅡなどの生理活性物質は心臓リモデリングを引き起こすと言われています。
RAA系は組織傷害因子として心臓リモデリングに深く関与しているため、これらを抑える必要があります。
心臓リモデリングについてはこちら
RAA系と薬物療法
RAA系は心臓リモデリングの進行因子であるため、薬物療法による治療が必要になります。
RAA系阻害薬は以下に示す通りです。
- ACE阻害薬
- アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
- 利尿薬
これらの薬剤は心不全(特にHFrEF)患者で使用されるものになります。
作用機序については別の記事でまた。
参考文献・著書
森本聡:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系
掲載先:腎と透析 Vol.90 No.5
まとめ
心不全の代償機転におけるRAA系について解説しました。
からだの生理的な反応ではありますが、長期的な反応ではかえって症状を悪化させてしまいます。
これらの機序がわかってくると、心不全患者の内服調整についても理解が進むのでしっかりと理解しておきましょう。
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