心臓再同期療法(CRT)とは?ガイドラインによる適応や効果を解説

循環器

あなたは心疾患患者の植込みデバイスについてどれだけ知っていますか。

デバイスを使用している患者は数多く存在しますが、その機能を理解せずに介入しているセラピストは多いです。

今回は、心不全患者に使用される心臓再同期療法について解説していきます。

この記事を読んでわかること

  • 心臓再同期療法の適応
  • リハビリテーションによる効果
  • 今後の課題、展望

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心臓再同期療法とは

心臓再同期療法(CRT)は両心室ペースメーカを用いて治療することを言います。

CRT:Carciac Resynchronization Therapy

通常のペースメーカは右心室のみリード線を入れる単心室ペースメーカであり、リード線の配置やペーシング方法が異なります。

果たして、心臓再同期療法はどのような症例が適応になるのでしょうか。

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心臓再同期療法の適応

中井俊子:心臓再同期療法(CRT)

上記写真はガイドラインによる心臓再同期療法の適応をまとめたものになります。

従来はNYHA分類Ⅲ~Ⅳの重症心不全を対象にしていましたが、最新のガイドラインではNYHAⅠ~Ⅱの軽症心不全においても導入が推奨されています。

心臓再同期療法の適応疾患は以下の通りになります。

  • 心不全
  • 左脚ブロック(LBBB)
  • 非左脚ブロック(NLBBB)

それぞれについて解説していきます。

心不全

重症心不全患者においては、心室内伝導障害は約3割に認められ、QRS波が幅広くなるほど生命予後は悪くなると報告されています。

心機能が低下した心不全(HFrEF)患者は左室の拡大(リモデリング)により心室内伝導障害が生じることは言うまでもありません。

リモデリングを知らない方はこちらの記事を参考にしてください

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1996年に心室内伝導障害を有する重症心不全患者8名における両心室ペーシングの効果が報告されました。

  • Cardiac Indexの改善
  • 僧帽弁逆流症(MR)の改善
  • 肺動脈楔入圧の低下

この介入報告が心臓再同期療法の原点であると言われています。

左脚ブロック(LBBB)

左室機能低下および左室拡大に伴う伝導障害が左脚ブロックであり、心臓再同期療法の有効性が報告されています。

左脚ブロックの心電図波形はV4-V6で結節を伴う幅広いQRS波が特徴です。

非左脚ブロック(NLBBB)

多くは右脚ブロックを指しますが、右脚ブロックに左脚ブロックがマスクされている可能性は十分にあり、こういった症例には心臓再同期療法は有効になります。

特にQRS波が延長している場合には左脚伝導障害の存在が懸念されるため、これらの是正が心収縮に寄与するものであると考えられています。

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心臓再同期療法の効果

先述した部分もありますが、一番の効果は伝導障害の是正によるものです。

2002年には心臓再同期療法の植込み前後を比較した研究が報告されました。

  • 6分間歩行の改善
  • QOLの改善
  • 心不全入院/死亡の減少

心臓再同期療法の心不全に対する有効性が示され、CRTレスポンダーといった認識が浸透していきました。

心臓再同期療法によるリバースリモデリングの恩恵が考えられる

しかし、実際にはエコー指標でリバースリモデリングが認められなくてもQOLが改善している症例も多く、生命予後とも相関しています。

注意点としては、心臓再同期療法を実施しただけで症状が改善するのではなく、以下の併用療法の軽視してはいけません。

  • 薬物療法
  • 運動療法
  • 食事療法

心不全は患者指導も非常に重要であると考えられており、他職種が連携して介入しなくてはいけません。

心不全についての記事はこちらから

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リハビリテーション

心臓再同期療法後のリハビリテーションにおける報告も増えてきています。

植込み3ヶ月以降に運動療法を導入した群と導入しない群50例を対象とした介入報告では、導入群のみpeak VO2(最高酸素摂取量)が改善しました。

心不全患者に対する運動療法は左室容積や左室駆出率の改善は乏しいものの、運動耐容能を向上させる報告の裏付けとなる結果です。

他にもさまざまな報告がみられます。

心臓リハビリテーション介入5ヶ月後の再評価で運動耐容能が改善した。運動療法の継続から骨格筋・呼吸・自律神経・血管機能や心拍予備能の改善も推察された

笠井健一et al:心臓リハビリテーションが運動耐容能の改善に有用であった心臓再同期療法後の1例

掲載先:心臓リハビリテーション(JJCR) 第22巻 第1号 2016年

3ヶ月の介入において、peak VO2の改善率は平均して10%であった。しかし、非デバイス群との改善率に有意差はなく、その原因として低心機能・運動による不整脈誘発・患者、医療者が運動療法を控える可能性などが挙げられる。

柳英利et al:心臓再同期療法装着心不全患者における運動耐容能改善効果は非デバイス患者より不良か?

掲載先:心臓リハビリテーション(JJCR) 第24巻 第1号 2018年

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心臓再同期療法の展望と課題

心臓再同期療法については、以下の問題が浮き彫りになっています。

  • 適切な症例に導入されていない
  • 導入のタイミングが遅れる

まずは心臓再同期療法の適応を見極め、適切なタイミングで導入していくことが重要です。

また、先述した通り伝送障害が改善されても心不全が改善しなければ心臓再同期療法の効果は乏しくなります。

いかに包括的に管理していくことが今後の課題になっていくでしょう。

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H2 参考文献、著書

文献:心臓再同期療法(CRT)

著者:中井俊子

掲載先:医学と薬学 第78巻 第5号 2021年5月

H2 まとめ

心室内伝導障害の治療法である心臓再同期療法について解説しました。

特にセラピストは植込みデバイスを理解せずに介入しているケースが多いです。

植込みデバイスを知ることで患者背景を把握でき、リスク管理に繋がるのではないでしょうか。

心臓再同期療法の植込み患者を担当した際は、ぜひこの記事の内容を参考にして頂けると幸いです。

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