現在、絶賛上映中である映画「余命10年」を観に行きました。
理学療法士である私も関わりがある分野であり、病気を持った家族や恋人の心情に涙を流してばかりです。
主人公の高林茉莉は難病である「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」と診断され、闘病生活を送られています。
今回は余命10年の感想と肺動脈性肺高血圧症の解説になります。
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余命10年とは
著者「小坂流加」自身の闘病生活を描いたノンフィクションであり、余命宣告を受けた彼女が生と死に対して向き合った物語です。
小説は2017年5月15日に文芸社文庫NEOにて出版され、累計70万部を超えるベストセラーとなりました。
2022年3月4日に公開され、世間では大反響の様子です。
余命10年ほんとに人生の中で1番泣ける映画
精一杯生きよう
— ひ (@0s___sh0) April 4, 2022
余命10年はほんとおすすめ
ぜひみてほしい
男の俺でも泣ける#余命10年
— ささき (@Sasaaaki_xx) April 4, 2022
著者は難病指定である「肺動脈性肺高血圧症」と診断されましたが、いったいどのような病気なのでしょうか。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)とは
人間は心臓から血液を全身へ送り、最終的にはまた心臓に戻る体循環で生命を維持しています。
心臓に戻った血液は肺に流れるようになっていますが、この動脈が肺動脈です。
肺動脈性肺高血圧症とは、この肺動脈の圧力が非常に上昇する病態となっています。
それでは、肺動脈性肺高血圧症について解説していきます。
人口割合
肺動脈性肺高血圧症の総数は以下の通りです。
令和2年度末に特定医療費(指定難病)受給者証を所持している患者数は4230人
また、肺動脈性肺高血圧症の年齢別割合は以下の図に示します。
若年層でも多い病気であることがわかりますね。
症状
肺動脈の圧力が高い状態が続くと心臓に負担がかかってしまい、その状態が長期化すると心不全に至ります。
心不全とは心臓の機能が低下した状態であり、以下の症状が現れます。
- 足のむくみ(浮腫)、体重増加
- 息切れ(労作性呼吸苦)
- 低酸素(胸水)
心不全に至った場合には薬物療法による調整が必要です。
心不全の薬物療法についてはこちらから
原因
肺動脈性肺高血圧症の原因は以下のように分類されています。
- 特発性PAH
- 遺伝性PAH
- 薬物誘発性PAH
- 膠原病に伴うPAH
- HIV感染症に伴うPAH
- 門脈圧上昇に伴うPAH
- 先天性心疾患に伴うPAH
- 住血吸虫症に伴うPAH
原因に関係する他の病気が見つからない場合は、特発性肺動脈性肺高血圧症と診断されます。
予後
旧来では以下の報告がありました。
その死因は突然死、右心不全、喀血が多かったです。
また、単施設の結果にはなりますが、年数ごとの予後データも発表されています。
- 1年生存率:67.9%
- 3年生存率:40.2%
- 5年生存率:38.1%
作中でも紹介されていましたが、10年生存率はかなり低いです。
治療法
肺動脈性肺高血圧症に対する治療には、肺と心不全を対象に施されます。
- 肺血管拡張療法
- 心不全の薬物療法
- リハビリテーション
- 在宅酸素療法(HOT)
- 栄養指導
特に心不全を発症すると繰り返すことが多く、患者指導を中心とした関わりが必要になります。
作中では高林茉莉さんが薬を管理したり、塩分過多の暴飲暴食をするなど、医療従事者としては注目してしまいました。
酸素在宅療法(HOT)
空気中に含まれる酸素では生命を維持することができない患者に対し、酸素供給機器を使用して在宅で生活するものになります。
医師の処方が必要になりますが、健康保険の適応になったことから多くの患者が使用しています。
作中でも高林茉莉さんは家で酸素を投与していましたね。
リハビリテーション
肺動脈性肺高血圧症を始め、呼吸器疾患患者にはリハビリテーションが適応になります。
リハビリテーションの内容について解説していきます。
呼吸リハビリテーションについて勉強したい人はこちらから
呼吸指導
基本は鼻から吸って口で吐く方法を指導し、そのあとに以下の呼吸訓練を実施します。
- 口すぼめ呼吸
- 腹式呼吸
酸素を吸うことは大事ですが、二酸化炭素を出すことも必要です。
また、肩で呼吸してしまうと呼吸筋を余分に使ってしまうため疲労しやすくなってしまいます。
正しい呼吸方法を身につけましょう。
ストレッチング
筋肉は使いすぎると疲弊してしまいますが、それは呼吸筋も同様です。
ストレッチングをすることで疲労を軽減することができます。
筋力/筋持久力訓練
日常生活を送るうえで筋力/筋持久力は必要条件になります。
- 呼吸と同調させたトレーニング
- 有酸素運動
重りやゴムバンドを使用して筋力増強を図ります。
全身持久力トレーニングとして散歩や自転車などの有酸素運動が有効であり、「ややきつい~きつい」あたりが運動の目安です。
患者指導
肺動脈性肺血圧症患者には患者指導が必要であり、私は以下の3点を指導しています。
- 運動療法
- 服薬管理
- 栄養指導
肺動脈性肺高血圧症患者は心不全を合併すると説明しました。
筋力が低下すれば息切れで日常生活に支障が出ますし、薬をしっかりと飲まなければ再発します。
また、塩分の取りすぎなどの栄養面も配慮しなければいけません。
患者家族との関わり
患者本人だけでなく、家族へのメンタルサポートも必要になります。
誰もが医療の専門知識を持っているわけではありませんから、相談場所があるだけでも家族は安心です。
安心させてあげられるような声かけを心がけましょう。
まとめ
余命10年で登場した肺動脈性肺高血圧症について解説しました。
実際には難治性の病気であり、生命予後は長くありません。
映画では病気を抱えた高林茉莉さんが、生と死に向き合って必死に生きていく様子が描かれており、医療従事者としては考えさせられる作品でした。
これからも患者や家族に寄り添っていける医療従事者を目指していきたいですね。
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