心不全などの慢性疾患患者を担当していると、医師や看護師などの医療従事者間で「服薬アドヒアランス」という言葉を耳にします。
これは慢性疾患患者にとってはひとつの課題であり、医療従事者は知っておくべき医療用語です。
今回は、初めて聞く方も多いアドヒアランスについて解説していきます。
この記事を読んでわかること
- 服薬アドヒアランスの概要
- 医療従事者が患者にできること
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アドヒアランスとは
アドヒアランスは英語でadherenceと表記し「固執」などと訳されます。
服薬アドヒアランスと呼ばれたりもしますが、医療現場では次の意味合いで用いられます。
要は治療をしっかりと受けているかどうかということですが、ひとつ疑問が浮かびます。
私たちは管理不足の患者を「コンプライアンスが悪い」などと表現しますが、両者の違いはなんでしょうか。
コンプライアンスとの違い
コンプライアンスは英語でcomplianceと表記し「遵守」などと訳されますが、医療従事者間では次のように使用されます。
アドヒアランスとコンプライアンスは似たような意味合いを持ちますが、両者の違いは患者の意思によるものです。
コンプライアンス:一方的な指導関係
アドヒアランス:相互理解の関係
従来はコンプライアンスの概念が浸透していましたが、近年ではアドヒアランスの考え方が重要視されてきています。
アドヒアランスの重要性
服薬アドヒアランスの低下は早期の治療中断などに影響を与えるとされており、アドヒアランスの向上が重要です。
アドヒアランスは以下の3つで構成されています。
- 開始:Initiation
- 履行:Imple- mentation
- 中止:Discontinuation
近年では慢性疾患患者の服薬アドヒアランスの低下は半数に及ぶと言われており、再入院率が悪化しています。
特に、次に示す条件が悪化を助長させています。
長期間の服薬ができていない
不十分な服薬習慣
服薬アドヒアランスの悪化は患者QOLに影響を与えるでしょう。
アドヒアランスの評価方法
近年の報告では、服薬アドヒアランスは2つの方法に大別されます。
- 直接的方法
- 間接的方法
現在アドヒアランス評価方法の明確な診断基準はないとされていますが、対象患者や治療の状況によって使い分けることが重要です。
服薬アドヒアランスを評価した論文では以下に示すように、主観的・間接的な評価尺度が多く活用されています。
- セルフレポート
- 質問紙
- Pill count
- 服薬支援システム
- 治療薬物濃度のモニタリング
ひとつずつ簡単に説明していきます。
セルフレポート
アドヒアランスの評価は患者に確認することが最も簡単な方法です。
- 治療効果を聞く
- 投薬日記の確認
はい/いいえで答えられるような質問をすることが重要です。
質問紙
アンケートによる回答を得ることで服薬アドヒアランスを把握することができます。
ここで重要なことが、匿名記載にすることで患者は最も正直になる可能性が高いということです。
Pill count
主に海外で服薬アドヒアランスを測定する際に使われます。
処方された医薬品の服薬日数などによりアドヒアランスを推定するものになりますが、患者が処方薬を処分してしまう可能性があり、過大評価が懸念されています。
服薬支援システム
欧米では、アラーム音により服薬を促す薬剤ボックスが開発されており、記憶の外的補助手段としての服薬支援機器の有用性が報告されています。
これらの活用により、一部の服薬アドヒアランスが低下している患者の一助になるかもしれません。
治療薬物濃度のモニタリング(TDM)
服薬アドヒアランスを最も正確に評価する方法は、薬物またはその代謝物の血清、尿中レベルを測定することです。
TDMは再現性が高く信頼できるデータであり、有害事象の危険性を軽減することもできます。
アドヒアランス向上のために
服薬アドヒアランスが低下する理由は以下に挙げられます。
- 患者の知識と理解
- 医療従事者とのコミュニケーション不足
- 服薬行動の問題
- 避けられない理由
私が入院患者に徹底していることは、患者指導と認知機能検査です。
服薬の重要性は薬剤師から説明しますが、よく関わるセラピストも患者指導に携わるべきだと考えています。
認知機能ではMMSEで評価しており、24点以下の患者には対策を考えます。
- 服薬カレンダーの使用
- ご家族の協力
- 訪問看護の導入
服薬アドヒアランスの向上は患者の再入院率を軽減させるため、医療従事者は患者とのコミュニケーションや指導を重要視するべきです。
まとめ
慢性疾患患者で注目されている服薬アドヒアランスについて解説しました。
現在では患者の協力理解が不可欠であり、コミュニケーション不足や患者側の服薬行動が問題となっています。
入院患者にできることとしては、患者指導や環境・サービス調整であり、再入院率を減少させるためにも行動しなければいけません。
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