ペースメーカにはレートレスポンスといった機能が設定されていますが、その詳細を知っていますか。
医師と相談してペースメーカの設定を変更することは、臨床上において必要なことです。
今回は、ペースメーカの設定であるレートレスポンスについて解説していきます。
この記事を読んでわかること
- レートレスポンスの概要
- リハビリテーションにおける注意点
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レートレスポンスとは
洞不全症候群(SSS)やβ遮断薬を使用している患者は、運動に応じた心拍数増加が起こらないことがあります。
そういった場合に、洞結節に代わるセンサーを用いてペースメーカに運動していることを認識させ、下限心拍数を増やす機能がレートレスポンスです。
一般的に運動レベルが低い場合には、心房と心室の同期性が重要であり、運動レベルに応じた心拍数の上昇が求められます。
レートレスポンス機能がない場合は、十分に心拍数が上がらなくても心房ペーシングが起こらず、運動に伴う心拍数増加が起こらないか低下します。
このように心拍数は心拍出量を決定する大きな因子です。
つまり、レートレスポンス機能により運動に伴い心拍数を増加させることは必要になります。
レートレスポンスの適応
基本的には洞不全症候群のように運動に伴い心拍数が適切に増加しない患者が適応になります。
項目別で挙げると以下の通りです。
- 変時性応答不全
- 運動耐容能のよい房室ブロック患者
変時性応答不全とは、運動に伴う心拍数増加が得られない状態をいい、冠動脈疾患や予後不良因子であると報告されています。
β遮断薬や抗不整脈薬を併用している患者で起こり得るので注意しましょう。
レートレスポンスセンサーの種類
ペースメーカに搭載されているレートレスポンス機能のセンサーは、以下に分類されます。
- 非生理的センサー
- 生理的センサー
各センサーについて解説していきます。
非生理的センサー
代表としては体動感型センサーであり、加速度に反応します。
上記図で示すように、安静時や歩行などの運動強度により信号強度が変化することが特徴です。
植込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)の多くは加速度センサーが使用されており、自転車エルゴメータにおける負荷には注意しましょう。
生理的センサー
運動に伴う生理的変化を感知するセンサーには、以下の2つが代表に挙げられます。
- 分時換気量
- 心内インピーダンス感知(CLS)
- QT時間感知型
それぞれについて解説していきます。
分時換気量
分時換気量センサーによる心拍数応答は上の図を参考にしてください。
非生理的(体動感型)センサーと比較して運動開始時の反応が遅いことや、運動終了後にかえって心拍数が上昇していることがあります。
また、嫌気性代謝閾値(AT)を超えると分時換気量が増加して心拍数の増加が鈍くなります。
心内インピーダンス感知
心室電極とペースメーカ本体の間のインピーダンスの変化を測定するものになります。
心内血液量の変化が大きい透析患者や神経調節性失神にも有効であるといった報告も見られます。
QT時間感知型
交感神経の緊張度に伴う変化を感知するため、運動だけでなく情動の変化にも対応できます。
しかし、電解質異常によってQT時間に影響がある病態では使用しにくいといった欠点があります。
リハビリテーション
2021年のガイドラインでも、レートレスポンスの使用による運動耐容能改善のコンセンサスは得られていません。
しかし、重度の変時性応答不全を認める患者には推奨されていることや、レートレスポンスの設定によりQOLが改善したといった報告も散見されています。
エルゴメータを用いた運動において、良好なレートレスポンスは分時換気量センサーのみで得られた。
山端志保et al:ペースメーカー移植術後の運動負荷におけるレートレスポンス機能の差異
下限心拍数が80bpm、運動負荷試験における最高心拍数も80bpmであり、変時性応答不全を認めた。CRTD設定をDDDからDDDRに変更して3日後に再検すると、最高心拍数は116bpmまで上昇し、著明な運動耐容能の改善が認められた。
小笹寧子:CRTD・ペースメーカ患者の運動耐容能と至適ペースメーカプログラム
このように変時性応答不全患者にはレートレスポンス機能を設定することで即時的に運動耐容能の変化を認めます。
しかし、レートレスポンスペーシングによる動悸感や症状を確認し、設定については医師と相談していきましょう。
まとめ
変時性応答不全に対応するレートレスポンス機能について解説しました。
ペースメーカ患者ではβ遮断薬の併用により心拍数の増加が起こりにくい患者は一定数存在します。
この機能を知っていれば、医師と相談して患者のQOLを改善する可能性もあります。
もう一度ペースメーカ患者の設定から確認するようにしましょう。
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